MINAS EXシリーズの動作確認方法の紹介
1. 概要
このページでは、PanasonicのサーボドライバであるMINAS EXシリーズの当社における動作確認方法をご紹介します。当社が具体的にどのように動作確認を行っているのかを知っていただき、少しでも安心してご購入いただけるよう作成しています。
EXシリーズは既にメーカーが生産を終了している機種です。しかし私たち保守部品.comは、生産終了した製品を主に取り扱うサイトです。あえてこの機種を選び記事を作成しました。
2. 位置決め動作の確認
当社には独自開発の動作確認ソフトウェアがあります。EXシリーズは、パルス列入力方式のアンプのため、そのソフトウェアの「A1SD75P3パルス発生機能」という機能を使って動作確認をします。「ピッチ送り移動量」の設定を、サーボモータのエンコーダーの1回転あたりの分解能と同じ数値に設定し、正転及び逆転方向にそれぞれピッチ送りを何度も繰り返し行うことで正確な位置決め動作ができることを確認しています。
さらに回転数計を使用し、指定したモータ回転速度と実際の回転速度が一致するかの確認も行っています。
なお、当社ではサーボドライバを動作確認する際は、正しい組み合わせとなるモータを接続した上で動作確認をしています。当社には動作確認用のサーボモータが容量別にストックされており、どんな容量のアンプであっても確実な動作確認ができる環境が整っています。
3. パラメータの読み書きの確認
パラメータの読み書きが正常に行えるかの確認には、同社のセットアップ支援ソフトウェアであるPANATERM(DV0P0461)を使用しています。EXシリーズは、Windows版のPANATERMでのパラメータ設定はできず、DOS版のPANATERMでしか設定することができません。EXシリーズが発売された頃は、まだWindowsが普及していなかった時代だからです。このため当社でもNECのPC-98を使って設定を行っております。
余談ですが、PANATERMにはいくつかのバージョンがあるのですが、当社の理解では大きく3つに分かれています。一つ目は最新バージョンのPANATERMで、こちらのページから無償でダウンロードができます。二つ目は、DV0P4460という品番のもので、MINAS A、AⅢ、E、A4に対応したバージョンになります。現在このDV0P4460は仕込生産品となっており簡単には入手できないためか、当社にも在庫のお問い合わせをいただくことがあります。三つ目は、上記の写真でご紹介したDOS版のDV0P0461になります。こちらも30年近く前の製品ですが、在庫のお問い合わせをよくいただきます。
上の写真は先ほどご紹介したDOS版のPANATERMのDV0P0461です。中身は3.5インチのフロッピーディスクです。時々ですが当社にも入荷しますので、お探しの方は時々当社サイトをチェックいただければと思います。
これは、PANATERMを使う際に必要になる通信ケーブル(DV0P0790)です。これもよく在庫のお問い合わせをいただきます。最近のサーボドライバの通信ケーブルはUSBケーブルが採用されていることが多いのですが、DV0P0790はDサブ25P-モジュラー6Pとなっています。こちらもお探しの方は時々当社サイトをチェックいただければと思います。在庫がない場合で、お急ぎの場合は当社で製作することも可能です。お気軽にお問い合わせください。
ちなみに、この通信ケーブルの在庫のお問い合わせが多い理由ですが、多くのサーボドライバは、PCでの設定のほかに、前面パネルでの設定ができるようになっているのに対し、EXシリーズやYシリーズは、PCでしか設定することができない仕様となっているからだと思います。このような仕様のサーボドライバは、保守担当者からすると、できるだけ使用してほしくないのではないかと感じています。設備を製造している時は問題ないのですが、数十年経過したあとに保守作業が発生した場合、その環境を用意するのがとても大変だからです。特にEXシリーズの場合は、通信ケーブルとPANATERMの他に、PC-98を用意しなければなりません。PC-98をいまだに所有している企業は少ないでしょうし、中古を購入したとしても、今度はMS-DOSのインストールをしなければならなかったり、使い方がよくわからなかったりといったことが発生します。このようなことから、PCでしか設定できないサーボドライバを使用することは、保守業務の立場からすればできるだけ使用しないことが望ましいでしょう。
なお、この通信ケーブルをPC-9821のノートにつなぐ場合、そのままでは接続できません。なぜなら、PC-9821のノートはRS232Cのコネクタがハーフピッチ14Pになっているからです。このため、変換ケーブルを仲介する必要があります。その変換ケーブルにNECの純正のものを使用する場合は問題ないのですが、サンワサプライのKRS-HA1502FKを使用すると通信できない場合があります。それを解決する方法があるのですが、その説明をしてしまうと長くなってしまうのでここでは省略します。もしお困りの方がいらしたらご相談ください。
4. 入出力信号の確認
この図は、EXシリーズを動作確認する際の回路です。パルスの発生には、三菱電機の位置決めユニット(A1SD75P3)を使用しています。動作確認時は、予めこの回路図の通りに配線されたケーブルを接続して検査を行っております。
ちなみに、多くのサーボドライバはパルス入力形態として、CW/CCWのほかに、パルス+符号、A相/B相などに対応しているのですが、このEXシリーズに関しては、CW/CCWに固定されています。このため、A1SD75P3から出力するパルスも、「CW/CCW」方式に設定しています。
当社では、アンプにモータを接続し、正確な位置決め動作ができることを確認するだけではなく、SRV-ON(サーボON)、CWL(CW駆動禁止)、CCWL(CCW駆動禁止)の各入力が正常に働くかの検査も行っております。これらの入力は、作業者の安全確保や機器の破損防止をするために使われることが多い入力です。このため当社では、この検査は非常に重要という認識を持って確認作業を行っております。
実際の検査においては、さきほどの回路図にありましたアンプのSRV-ON(サーボON)、CWL(CW駆動禁止)、CCWL(CCW駆動禁止)の3つの入力を、上の写真のようにPANATERMでモニタしながら入れたり切ったりをすることで、それらの入力が正常に反応するかを確認しています。
5. 備考
EXシリーズは、当社の販売するサーボドライバの中でも最も古い機種の一つです。発売から30年近く経った今でも、在庫のお問い合わせをいただいております。なぜか同時期に発売されたXPシリーズやYシリーズに対するお問い合わせは少ないのですが、EXシリーズには問い合わせが多いと感じています。お問い合わせいただくお客様は半導体関連の企業の方が多いことから、広く半導体設備に使われていたのだと思われます。EXシリーズに限らず、必要な機種がございましたら、ぜひ気軽にお問い合わせいただけたらと思います。
6. 当社で動作確認可能なEXシリーズの一覧表
EXシリーズと同時期に販売されていたシリーズも合わせて記載しています。
EXシリーズ | EPシリーズ | XXシリーズ | XPシリーズ | Xシリーズ |
---|---|---|---|---|
MSD3A1P1E MSD3A3P1E MSD5A1P1E MSD5A3P1E MSD011P1E MSD013P1E MSD021P1E MSD023P1E MSD043P1E |
MSS3A1P1P MSS3A3P1P MSS5A1P1P MSS5A3P1P MSS011P1P MSS013P1P MSS021P1P MSS023P1P MSS043P1P |
MSD3A1A1XX MSD3A3A1XX MSD5A1A1XX MSD5A3A1XX MSD011A1XX MSD013A1XX MSD021A1XX MSD023A1XX MSD041A1XX MSD043A1XX MSD083A1XX |
MSS3A1A1XP MSS3A3A1XP MSS5A1A1XP MSS5A3A1XP MSS011A1XP MSS013A1XP MSS021A1XP MSS023A1XP MSS041A1XP MSS043A1XP MSS083A1XP |
MSD3A1A1X MSD3A3A1X MSD5A1A1X MSD5A3A1X MSD011A1X MSD013A1X MSD021A1X MSD023A1X MSD041A1X MSD043A1X MSD083A1X |
EXシリーズ | MSD3A1P1E MSD3A3P1E MSD5A1P1E MSD5A3P1E MSD011P1E MSD013P1E MSD021P1E MSD023P1E MSD043P1E |
---|---|
EPシリーズ | MSS3A1P1P MSS3A3P1P MSS5A1P1P MSS5A3P1P MSS011P1P MSS013P1P MSS021P1P MSS023P1P MSS043P1P |
XXシリーズ | MSD3A1A1XX MSD3A3A1XX MSD5A1A1XX MSD5A3A1XX MSD011A1XX MSD013A1XX MSD021A1XX MSD023A1XX MSD041A1XX MSD043A1XX MSD083A1XX |
XPシリーズ | MSS3A1A1XP MSS3A3A1XP MSS5A1A1XP MSS5A3A1XP MSS011A1XP MSS013A1XP MSS021A1XP MSS023A1XP MSS041A1XP MSS043A1XP MSS083A1XP |
Xシリーズ | MSD3A1A1X MSD3A3A1X MSD5A1A1X MSD5A3A1X MSD011A1X MSD013A1X MSD021A1X MSD023A1X MSD041A1X MSD043A1X MSD083A1X |
私たち保守部品.comの使命は、確実に動作するFA部品をお届けすることで皆様の生産設備を守ることです。今後も動作確認に力を入れ、お客様が安心してご利用いただけるよう最大限の努力をしてまいります。