MR-J□Aの動作確認方法の紹介
1. 概要
このページでは、三菱のサーボドライバであるMR-Jシリーズの当社における動作確認方法をご紹介します。当社が具体的にどのように動作確認を行っているのかを知っていただき、少しでも安心してご購入いただけるよう作成しています。
MR-Jシリーズは既にメーカーが生産を終了している機種です。しかし私たち保守部品.comは、生産終了した製品を主に取り扱うサイトです。あえてこの機種を選び記事を作成しました。
2. パラメータの設定
モータを接続して運転する前に、パラメータの設定を行います。MR-Jシリーズは、MR Configurator(セットアップソフトウェア)に対応した機種ではないため、パラメータの変更はサーボアンプ前面の表示部で行う必要があります。そのため、パラメータを設定しながら、各ボタンが正常に反応するかどうかの確認も行いますが、ボタンの反応が悪いと、設定に時間がかかってしまったり、また設定ミスにつながることもあるため、ボタンの反応が鈍いアンプは、その旨を記載して販売しております。また、同時に7セグメントのLEDが正常に点灯することも確認しております。
3. 位置決め動作の確認
MR-J□Aは、パルス列入力に対応したアンプですので、パルス列を入力しての位置決め動作を確認します。パルス列入力による位置決め動作の確認は、当社で独自開発した動作確認ソフトウェアの「A1SD75P3パルス発生機能」という機能を使って行います。「ピッチ送り移動量」の設定を、サーボモータのエンコーダーの1回転あたりの分解能と同じ数値に設定し、正転、及び、逆転方向にそれぞれピッチ送りを何度も繰り返し行うことで、正確な位置決め動作ができることを確認しています。
4. 速度、及び、外部トルク制限機能の確認
MR-J□Aは、速度、及び、外部トルク制限にも対応していますので、その制御モードや機能がそれぞれ正常に動作するかも確認します。その際は、同じく当社独自開発の動作確認ソフトウェアを使っています。速度制御モードやトルク制限では、与える電圧に応じて速度や最大トルクを変化させることができるようになっており、速度制御時においては、±10Vでサーボモータの回転速度と回転方向を制御でき、外部トルク制限時においては、0~+10Vでサーボモータ最大出力トルクを任意の値に変更できるようになっています。このため、このソフトウェアの「A1S62DAアナログ電圧出力機能」という機能を使い、各アナログ入力に与える電圧を変化させ、それぞれ速度やトルクが変化するかを確認しています。
さらに回転数計を使用し、設定したモータの回転速度と実際の回転速度が一致するかの確認も行っています。
なお、当社ではサーボアンプの動作確認をする際は、正しい組み合わせとなるモータを接続した上で動作確認をしています。当社には動作確認用のサーボモータが容量別にストックされており、どんな容量のアンプであっても確実な動作確認ができる環境が整っています。
この図は、MR-J□Aを動作確認するときの回路です。パルスの発生には、三菱電機の位置決めユニット(A1SD75P3)を使用しています。速度・トルク制限用のアナログ電圧の出力には、アナログ出力ユニット(A1S62DA)を使用しています。動作確認時は、予めこの回路図の通りに配線されたケーブルと、当社で製作したツールを接続して検査を行っております。
パルス列入力回路についてですが、より確実な動作確認をするために、A1SD75P3から出力するパルスは、「パルス列+符号」方式ではなく、「正転/逆転」方式としています。それに合わせてMR-J□Aの設定も、「指令パルス入力形態」を「正転、逆転パルス列」方式で受け取るようにしています。こうすることで、MR-J□A内部のパルス列入力用のフォトカプラの2つが正常に高速パルスを受け取るかを、より確実に確認することができます。
5. 各種制御信号(CN1)の確認
CN1は外部機器と制御信号でやり取りを行うためのポートで、上の写真は、このポートの動作確認を行うために当社で製作したツールとなります。このツールを使用することで、配線の手間を省略するとともに、人為的なミスによる製品の故障を防ぐ狙いがあります。生産終了したFA部品は大変貴重で数には限りがありますので、なるべく1台も壊さないようにという意識をもって動作確認にあたります。
このツールで確認している入出力コネクタの機能は下記の通りです。
サーボオンSON | (SON[28]) | :トグルスイッチ |
アラームリセット | (RES[29]) | :タクトスイッチ |
正転ストロークエンド | (LSP[30]) | :トグルスイッチ |
逆転ストロークエンド | (LSN[31]) | :トグルスイッチ |
クリア | (CR [32]) | :トグルスイッチ |
外部トルク制限 | (TL [33]) | :トグルスイッチ |
準備完了 | (RD [24]) | :LED(緑) |
位置決め完了 | (PF [25]) | :LED(オレンジ) |
零速度検出 | (ZSP[26]) | :LED(青) |
故障 | (ALM[27]) | :LED(赤) |
このツールの基板に実装されたスイッチの操作で信号の入力を行いますが、信号の入力に応じてモータが所定の動作を行えば、入力側の回路は正常であると判断できます。出力側は、診断モード(DO信号チェック)を使用して、強制的に信号を出力させます。ツールの基板に実装されたLEDが点灯すれば出力側の回路も正常であると判断できます。
こちらはツールの基板のパターン図で、ツールを製作する際に描いたものです。
こちらはツールを製作しているときの様子です。
6. S/Wバージョンの確認
当社では必ずサーボパックのソフトVerを調べ、商品ページに記載するようにしています。同じ型番でもソフトVerによって若干の違いがある場合があるためです。
7. 基板の点検
動作確認を行う前に、本体のカバーを外して基板の目視点検を行います。上の写真のように、コンデンサの液漏れによる腐食が確認されるケースがあります。コンデンサの液漏れが発生している場合、多くの製品では電源が入らなくなりますが、電源が入って正常に動作してしまう場合もあります。しかし、液漏れによってコンデンサの寿命は短いことが予想され、また基板のパターンや他の部品を腐食させている可能性もありますので、正常に動作したとしても販売はしません。
同時に、埃や油といった異物の付着も確認します。稼働していた環境によっては、粉塵などが付着している場合がありますので、お客様と当社の社員の人体への影響を考慮し、エアーダスターなどを使用して清掃を行います。
また、昨今ではヤフオクをはじめとした市場で、中古品を新品に見立てたものが横行しておりますので、その見極めも行っております。当社の買い取り依頼にも、そういった偽装品が混ざって入ってくることがありますが、新品に偽装されたものの多くは、状態の悪い中古品を使用しています。動かしてみると、通常よりもノイズや発熱量が増しているものがあり、設備に取り付けて動かすのは非常にリスクが高いです。当社は、何年にもわたって純正品と偽装品の比較を行ってきました。その蓄積したデータベースを基に、シリアルナンバーや部品交換の有無、銘板の情報を確認して、純正品であることが確認できたものだけを販売しております。
8. 当社で動作確認可能なMR-Jシリーズの一覧表
このページでは、MR-J□Aの動作確認方法についてご説明してきましたが、下記の表の通り、MR-J□Bも動作確認が可能です。ここで紹介した方法とほぼ同じ方法で動作確認をしています。
汎用インタフェース | SSCNETⅢ対応 | |
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200V | MR-J10A MR-J20A MR-J40A MR-J60A MR-J70A MR-J100A MR-J200A MR-J350A MR-J10MA MR-J20MA MR-J40MA MR-J60MA MR-J70MA MR-J100MA MR-J200MA MR-J350MA |
MR-J10B MR-J20B MR-J40B MR-J60B MR-J70B MR-J100B MR-J200B MR-J350B |
100V | MR-J10A1 MR-J20A1 MR-J40A1 MR-J60A1 MR-J70A1 MR-J100A1 MR-J200A1 MR-J350A1 MR-J10MA1 MR-J20MA1 MR-J40MA1 MR-J60MA1 MR-J70MA1 MR-J100MA1 MR-J200MA1 MR-J350MA1 |
200V
汎用インタフェース | MR-J10A MR-J20A MR-J40A MR-J60A MR-J70A MR-J100A MR-J200A MR-J350A MR-J10MA MR-J20MA MR-J40MA MR-J60MA MR-J70MA MR-J100MA MR-J200MA MR-J350MA |
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SSCNETⅢ対応 | MR-J10B MR-J20B MR-J40B MR-J60B MR-J70B MR-J100B MR-J200B MR-J350B |
100V
汎用インタフェース | MR-J10A1 MR-J20A1 MR-J40A1 MR-J60A1 MR-J70A1 MR-J100A1 MR-J200A1 MR-J350A1 MR-J10MA1 MR-J20MA1 MR-J40MA1 MR-J60MA1 MR-J70MA1 MR-J100MA1 MR-J200MA1 MR-J350MA1 |
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特殊仕様のアンプはオークションサイトでよく見かけます。もし、そのようなアンプをご購入なさった場合は、自由にパラメータの変更ができない場合がありますので注意が必要です。
私たち保守部品.comの使命は、確実に動作するFA部品をお届けすることで皆様の生産設備を守ることです。今後も動作確認に力を入れ、お客様が安心してご利用いただけるよう最大限の努力をしてまいります。